米価格高騰の原因とこれから わたし的見解

お米の値段、改善の兆しがあるようですが、高くなりましたね。私が見聞きした情報を元に、なぜお米の値段が上がっているのかまとめていきます。

ざっくり言うと、供給の減少、需要増、コスト増が重なったのが原因です。また、小泉農水相に変わって政策転換が議論されていますが、根本的に国際的な価格競争力が低い状態が続いていて、割高な価格でもありました。

お断り。ここでは確度が高いと思われる情報をまとめていますが、あくまで私の独断と偏見に基づいています。数値の元データについて分かる部分は書いておきますが、レポートを書くことを想定して情報を集めていませんでした。除外した内容や、私の知らない他の要因もあると思いますので、そういった点はご了承ください。間違いなどあれば、コメント欄から指摘してください。

目次

前提として知っておいた方がいいこと

長期的な米の価格低下とコメ余り

長期的な傾向として、人口減少とパンなどの小麦の消費の増加で年々需要は減っています。需要に合わせて毎年10万トンくらいずつ生産量は落としていました。

急激に価格が上がりはじめたのが2023年ですが、それまでは価格が下がっていっています。特に、その前の2021年、2022年はコロナ禍もあって消費が落ち込み、多くの生産者が赤字になるほど価格が低下した状態でした。

米の生産基盤がボロボロな状態

そのような状況で米農家はどうだったかというと、順調に(?)廃業が増えていました。今後は団塊の世代の高齢化が進み、さらに状況は悪化します。また、一般企業の定年年齢の後ろ倒しにより、定年後に家の農業を継ぐという事が難しくなってきています。関係者からは、これから5年が正念場という言葉をよく聞きます。

米の生産を維持するためには生産者にとっても利益の出る状態が必要です。単純に増産すればいいという話ではありませんし、人口も減る中で、単純に農業人口を増やせばいいという話でもありません。何も考えずに増産すれば需要は減っていますから価格崩壊が起きます。利益が出なければ継がせられないし、人口が減る中で同じ人数で同じ量を生産するのは社会的に無理があります。農業関係の政治家が価格崩壊を警戒するのは、このあたりが原因です。

今の価格上昇ばかり報道されがちですが、消費者は5年後、10年後に十分な量が生産できるか心配した方がいいです。生産基盤が崩壊したら価格高騰が長期化しますし、今以上に高くなる可能性が大きいです。

主な要因

供給不足

減反などの生産調整をしていて生産量に余裕がなかった

学校でも習った通り、1971年から2018年まで減反を行い、生産量を調整していました。2018年で廃止されたという事になっていますが、その後も生産目安を示したり、転作への補助金を出すことで、実質的な減反が続いています。

問題なのが消費量に対して生産目安が余裕がないことです。備蓄米と民間の在庫がバッファーになりますが、何かあってその在庫が尽きてしまうと、今回の様な高騰が起きます。

直前までのコロナによる需要減(短期的な生産調整)

コロナ禍で外食需要が大幅に下がり、それに合わせて生産量も下げました。

当時は不要不急の外出は控えるように言われていましたし、飲み会でもやろうものなら大バッシングです。外国からの訪日客もストップしましたから、当然、おコメの消費量も下がることになります。

2023年の天候による不作

例年にない夏場の高温で米の白濁などが起き、食用米としての流通量が減りました。結果的に、主食用米の供給が需要を数十万トン下回ることになり、これが直接のきっかけとなって高騰が起きました。

翌年、2024年分は収穫量が回復したという政府見解ですが、農家からはそんなにできていないという声が多く聞かれます。一部の水田から抜き取り調査をして全体量を推計するのですが、これが実態を反映していないのではないか?ということが、専門家や各種報道から指摘されています。

コメ不足による民間在庫の減少・翌年分の先食い

2023年が不作という事で、一時、店頭在庫が消えるという現象が起きました。そのような状況ですから、2024年の夏には生産者や卸の在庫もカラカラの状態です。

その状態で2024年の収穫を迎えたため、本来であれば昨年在庫と並行して販売される時期に、2024年収穫分がどんどん売りに出されるという状況になりました。そのような状況で需要をやや上回る推計量の収穫があったとしても、小売店まで十分供給されるはずがありません。推計量が下振れしていればなおさらです。

需要増・コストアップ

戦争・円安による全体的なコストアップ

食品に限らず、全体的に物価が上がっています。米の場合は燃料・肥料などの生産コストと、輸送費などの流通コストなどが影響します。

・コロナ禍からの回復・インバウンドの急増による外食需要の急増

物価高という事で外食は抑えれらえている面もありますが、それでもコロナ禍と比べると、外食需要は増加しました。インバウンド観光客はコロナ禍前を超えています。

・各家庭による買いだめ・需要増

コメ価格高騰が叫ばれる中、なぜか家庭のコメ需要は増えています。買いだめなのか、報道によりコメに意識が行き消費が増えたのか、何なんでしょうか。

買いだめと言っても30kgの袋を置いておくというイメージではありません。各家庭が1kgや5kg余分に持っただけで、全国レベルでは膨大なお米がお店から消えることになります。2022年時点で約5,400万世帯あるそうなので、各世帯1kgなら5.4万トン、5kgなら27万トンがお店から消えます。

政策的問題

減反はパンなどの小麦消費増加を背景に、コメ余りによる暴落を防ぐために開始されました。短期的には必要だったものの、半世紀以上だらだらと続けてしまった弊害が出ています。

安全保障的にも主食は国内で生産できる体制を保つことが重要なのですが、減反は真逆のことをしています。本来は農家に米を作らせて、コメ価格が下がっても所得補償をするという政策が必要でした。

また、「作らない事」に対して補助金が出たため、「大規模にして効率的に栽培する」という方向のインセンティブが働きません。むしろ、必要以上に兼業や小規模農家を温存してしまい、農地を集約した効率的な運営を妨げてしまっていました。

前段ともつながっていますが、効率化による低価格化をしないことでさらに国内消費が減る、輸出時の競争力が減るという事態に陥っていました。

価格高騰と複数年契約の影響

大手外食チェーンなどは毎年買い付けてるわけではなくて、複数年契約(何年先までは何トンを何円で売ってください)という契約を、卸や生産者と先にしてしまいます。今回高騰しているのがスポット買いの料金で、複数年契約の金額は基本的に動きません。流石に金額を見直してもらうケースもあるようですが。

こちらは売約済みで納品義務があるので優先的に仕入れ分を割り当てられますが、今の状況だと赤字です。そうなると、農協から出た分の比較的やすいお米はそちらにあてられて、小売では割高なスポット買いの価格がダイレクトに反映される上に、損失分をこちらで取り返そうという意識が働きます。

具体的な金額を言うと、60kgあたり農協は2万円台、スポット価格は4万円台(5万円を超えることもあったとか)と報道されています。

総合して

元々、需要不足で価格が落ち、赤字の農家も多かった(でも価格はあげられなかった)ところに、一定以上の価格上昇要因が重なったことで、せきを切ったように値上げがはじまったということだと思います。本来はこのような状態になったら農地の集約が進んで原価が下がっていくのですが、今までの政策のせいでそうはなりませんでした。一時的な要因もありますが、インフレ傾向は今後も続くと思いますので、落ち着いたあとも徐々に価格は上がると思います。

流通の目詰まりや転売の問題もなくはないのでしょうが、先に上げた需要とのギャップが発生したことが根本的な原因です。小売りは周りより少し下げただけですぐに売り切れてしまう状態だそうです。

誤情報・ミスリードと思う情報

卸売業者や農協(JA)の買い占めによる価格つり上げが原因

やたらと多い陰謀論ですね。

実際には農協経由のコメの方が安くて、高く買ってくれる他の民間業者に売ってしまうため、農協を通さない取引が増えています。以前は農協を通した取引が4割台だったのが、3割台に落ちてしまっています。

農協も、2022年ごろに赤字が大量に発生したこともあり、生産コスト以下では売れないというスタンスを取っているところもあるようです。それは不当に吊り上げているわけではなく、協同組合として正当な行為でしょう。

卸についても先に説明した家庭の買い占めと同じで、いろいろな業者が少しずつ在庫を厚く持とうとした結果、全体のコメ不足感が加速したというところでしょう。

輸出拡大が原因・コメ不足なのに輸出を推進している

輸出を推奨しているのは事実ですが、売約済みなので米不足だからって勝手にキャンセルできるものではありません。そもそも、総生産量に対する輸出分は1%台にすぎず、コメ価格の高騰に対してほぼほぼ影響はありません。

中山間地が4割もあるから大規模化は無理・大規模化できる場所はすでにしている

北海道とか平野でやるような、今のコメ農家の平均からすると「超大規模」というようなところしか大規模と呼ばないのならそうでしょう。これは0か100かの極論で、実態とは異なります。

中山間地でも改善の余地は大幅にあります。たとえば、島根県のトゥリーアンドノーフさんは、中山間地で小規模な田んぼを束ねて運営されています。スマート農業と言える方法を試行錯誤されて、約100ヘクタールの田んぼを3名程度で運営されています。ちなみに、稲作農家の平均面積は1.5ヘクタールです。

また、いいのか悪いのか人口が減ってきますから、総消費量は減っていきます。そのため、大規模化しやすい地域の生産で賄える割合は増えていきます。

輸入を拡大すれば解決する

一時的な緊急対応としては否定しませんが、かなり安易な方法だと思います。

安全保障的に主食の国内生産を保つ必要はあります。価格崩壊をしてしまえば国内の生産基盤が崩壊して、それこそ取り返しのつかない状態になってしまうでしょう。また、生産を減らしている状態でこれをやるのは順番が違うと思います。

結局どうすればいい

今後、5年、10年で一気に農家の引退が増えますから、ここで効率化を進められるかが鍵です。

大規模化と基盤整備

細かい地権者(農家)に分かれてしまっている土地をまとめる必要があります。そして、区画を集約したり、水路などを補修・再設計するといった、基盤整備をして効率的な農業を行えるようにすることが重要です。

言うは易し行うは難しで、地権者さんがなかなか土地を手放してくれない、貸してくれないという問題があります。

意欲のある農家への所得補償

先にも言いましたが、作らないことから作った農家への所得補償へシフトする必要があるでしょう。同時に、ある程度の農家さんには退場してもらう必要があります。

中山間地の高付加価値化・6次産業化

中山間地でも効率化の余地はあるとは言いましたが、それでも限界はあります。特に、棚田の様な形態は機械を入れることが難しく、手作業が多くなってしまいます。

そういった農地は補助金を出して維持するのか、高付加価値の作物を作るのか、体験型農業や観光地として別の価値を付与するのか。耕作を続けていくのであれば、方向性を変える必要があります。

参考資料

コメ価格高騰は #JA のせい? JA全農とっとり県本部長と徳本修一がガチ議論
来年僕たちは100%田植えを辞めます!湛水直播について熱く語る動画
日本一溝さらいしている男が語る「今のままでは水田農業は崩壊する」コメづくりの生産性が上がらない最大のボトルネックとは
コメ農家はみんな赤字なの? 食料安全保障と農業のキホンの「キ」(3)
【ナゼ令和の米騒動は起きたのか?】小泉進次郎の改革意欲の根源にあるものとは?歴史的背景から現在まで総まとめ《産経新聞・水内茂幸の解説》
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